あらすじ
こんとあきは生まれたときからずっと一緒にいます。
こんは、おばあちゃんがあきのために作ったきつねのぬいぐるみ。こんとあきはいつも一緒に遊んで、あきはだんだん大きくなりました。ところがこんはだんだん古くなり、ある日、腕がほころびてしまいました。
そこで二人はこんをおばあちゃんに直してもらうために、汽車に乗って砂丘町まで行くことしました。幼い女の子ときつねのぬいぐるみの二人旅が始まります。
本の情報
作:林明子
全40ページ
定価1300円+税
発行:1989年6月1刷 2019年12月106刷
発行所:福音館書店
この本を読んで
林明子さんの描く絵が大好きだ。
幼かった自分が見ていた世界を思い起こさせる、柔らかく、温かい絵。見ているだけでほっとする。それもあり、つい自分とあきを重ね合わせてしまう。こんという存在がいることも。
幼い頃子供なら誰しも、こんのような存在がそばにいたのではないだろうか。(時代のせいか、性別の違いか、子供の個性か、息子にはいないようだけれども)
そんなこんなでほかのどの本の登場人物よりもあきに感情移入してしまい、こんの腕がほころびたときは泣きたくなり、旅の途中でこんと離れ離れになってしまったときは動揺し、おばあちゃんの家に着く寸前でこんが犬に襲われたときは絶望を感じた。
そしてようやくおばあちゃんの家にたどり着き、こんをきれいになおしてもらったときの安心感。
帰りの旅の様子は物語にはないけれど、新品同様に直してもらったこんと、おばあちゃんにエネルギーをチャージしてもらったあきなら何の心配もいらない。きっと行き以上に楽しい帰り道だったはずだ。
お気に入りの場面
こんは可愛らしい外見からは想像ができないけれど、とっても紳士的で頼もしいのだ。旅のアテンドをし、怖い犬からはあきを守ろうとする。
そして特筆すべきは、どんなピンチの時でもあきが不安にならないよう『だいじょうぶ、だいじょうぶ』と声をかけることである。そのけなげな姿にぐっとくる。
人は緊急事態に本性が出るというけれど、どんなときもあきを思いやるこんの姿は尊敬に値する。
こんなときに
おばあちゃんの家にふらりと遊びに行きたいなぁと思ったときに読みたい一冊